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ジャック・ラカン「転移に関する発言」(『エクリ』所収)の日本語訳

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ジャック・ラカン「転移に関する発言」(『エクリ』所収)の日本語訳

  • Jacques Lacan (1951) « Intervention sur le transfert », Écrits, Éditions de Seuil, 1966. のほぼ全訳
    • ブルース・フィンクによる英訳(Écrits: the first complete edition in English, translated by Bruce Fink, WW Norton, 2006.)を適宜参照した
  • 訳出に際して以下の既訳を参照:転移に関する発言 - à la lettre

ただ、フロイトは、彼自身の告白によれば、ドラの欲望の対象に関し、ある誤りを犯しています。それは、フロイト自身、対象という問題に関心を集中していたからです。つまり、そこに含まれている根本的な主体の二重性を介入させなかったからです。フロイトは、ドラの中で誰が欲望しているのかということではなくて、ドラは何を欲望しているのかということを問うていました。そしてフロイトは結局次のことに思い至ります。つまりドラとその父、K夫妻から成る四人組のバレーの中で、K氏に自身を同一化していたドラの興味を、真にひいている対象はK夫人だということです。ドラの自我モワがどこにあるのかという問いは、こうして解決されました。つまり、ドラの自我モワ、それはK氏です。(ジャック・ラカン〔1955–1956〕『精神病』下: 28頁、岩波書店。強調引用者)

フロイトは初め、次のような葛藤を孕んだ関係を彼女の内に見ることができると思っていました。それはつまり、ドラが、彼女の最初の愛の対象、すなわち父親から自分を解き放つことができなかったために、もっと正常な対象、即ち他の男性へと向かうことができなかったことに由来する葛藤です。ところがドラにとっての対象は、フロイトの症例検討においてK夫人と呼ばれている、正に彼女の父親の愛人である女性に他ならなかったのです。 この物語は、ご存知のように四人の人物のメヌエットです。つまり、ドラ、その父親、K氏、K夫人の四人です。K氏は要するに、ドラにとっての自我モワとして役立っています。というのは、ドラがK夫人との間に実際に関係を持つことができるのは、K氏の仲介によってですから。〔…〕 K氏の仲介があるからこそ、彼女は耐えられる関係を保っています。この四分の一の仲介者がこの状況の維持にとって不可欠であるのは、彼女の愛情の対象が彼女と同性であるからではありません。むしろそれは、同一性と競争という最も深い関係を、彼女が父親との間に持っているからなのです。しかもこの関係は、両親の内、母親が全く消し去られているということによって、一層強くなっています。この四人のグループという付置において、状況がどうにか持ちこたえられたというだけでなく、実際に支持されてきたのは、彼女にとってK氏抜きのこの三者関係がとりわけ耐えられなかったからです。(『精神病』上: 150–151頁、岩波書店)

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